『価値創造の場』の調査支援
内閣府の知的財産戦略本部が実施している「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーションの実施に関するタスクフォース」からの依頼を受け、デンマークの企業・価値創造の場、オープンイノベーションの調査支援を行いました。北欧研究所では、訪問先の選定から当日のサポートを実施しました。
More内閣府の知的財産戦略本部が実施している「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーションの実施に関するタスクフォース」からの依頼を受け、デンマークの企業・価値創造の場、オープンイノベーションの調査支援を行いました。北欧研究所では、訪問先の選定から当日のサポートを実施しました。
More謹んで新春の祝詞を申し上げます。
昨年は、格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
皆様におかれましては、どのような新年を迎えられているでしょうか。
私は、毎年の恒例となったデンマークでのクリスマス休暇を過ごし、その後は吹雪の中のスキーと暖かい部屋の中での積んでおかれていた書籍の読書三昧の日々で年越しをしました。デジタルデトックスが北欧では注目されてきていますが、ネットの接続がない自然の中に入り込み数日過ごすことの効力を感じた数日でした。
2018年を簡単に振り返りますと、5月にEUで施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)やEU-EPAの進展など、現在の不安定な世界政治情勢への対処・巨大IT産業への反発を試みるEUの動き、呼応する日本への期待が注目される年でした。2018年末には、NECによるデンマークの大手SIer、KMD買収のビックニュースが飛び込んできました。皆様もすでにニュースなどでご存知かもしれませんが、デンマーク国内でも大きく報道されました。買収という形ではありますが日本企業であるNECに非常に好意的なコメントが多くみられています。
相変わらず日本と北欧の関係は良好で、その前向きな影響は北欧研究所でも大きく見られています。北欧研究所では、日本・北欧の両側から大きく関心を受け、2018年も活発な研究・調査の一年となりました。未来創造の『戦略デザイン分野』では、北欧のデザインシンキング、参加型デザインやリビングラボの手法をベースにしたプロジェクトを実施しています。日本のIT企業との共同研究として家族のコミュニケーションを支援するITシステムの研究、デンマークのフィンテック企業との新しいプラットフォームのサービスディスカバリー・プロダクトデザイン、社会課題の新しい解決方法として「リビングラボ」研究を進めています。戦略デザインの各プロジェクトは、2019年も継続していきます。『北欧調査分野』では、政治・経済・社会・芸術・技術分野など多岐にわたりサービスを提供いたしました。多様性・多様な働き方、フィンテック, 循環型経済, 地域暖房, スマートシティ, 電子政府の依頼や委託調査など、日本社会の現状を大きく反映し、また小国デンマークの特徴的な点がクローズアップされた年でもありました。『北欧起業・ビジネス支援』では、技術機械分野・日本食分野における日本企業のデンマーク進出支援、法人登記や現地での取引支援など、北欧諸国へのビジネス展開支援を行いました。
いま、世界が揺れているのと同様に、北欧も揺れています。移民排斥、富の不均等、…。「幸せな国」にも課題は多々あり、皆がいつも笑顔でいるわけではありません。しかしながら、北欧には、事実を直視し、議論を続け、最善策の提案を行う勇気を持つ人たちがいます。そして、各所をまきこみ個人個人が自分ごととして考える北欧諸国は、どの国よりも半歩先に解決へと向かっているように思えます。諦めずに最善の策を粘り強く探し続ける、いままで誰も描いてなかった未来を創っていくことを厭わない尖ったイノベーションの宝庫です。北欧諸国の課題解決策や、新しいイノベーション芽を育つ環境創りは、日本にも応用できると考えています。2019年は、そんなイノベーションの方策を数多く報告すると同時に、皆様と一緒に新しくイノベーションを創り出していきたいと考えています。
今後も、北欧研究所は新陳代謝を重ね、新しい知見とを吸収しつつ、今まで以上に多種多様な視点からの北欧情報提供や調査、未来創造を進めていく所存です。 日本からは、北欧は幸せな社会という評価を得ています。私は、14年の北欧生活を経て、本当に幸せに満ち溢れた社会というのは、コミュニティの住人が模索し努力を重ねた結果初めて勝ち取れるのものであり、継続して努力し続けることで維持できるものだと考えるようになりました。私たち北欧研究所は、そんな北欧の試行錯誤から学べることを伝達すること、日本がよりよい幸せな国となるように、日本流の「幸せのかたち」を模索できるような幸せへのヒントを提供していくこと、そして何よりも皆様と一緒に新しい社会づくり、未来創造を積極的に進めていきたいと思っています。
2019年も、北欧研究所(japanordic)に変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
北欧研究所代表 安岡美佳
2018年12月25日、北欧研究所によるホワイトペーパー「働き方を主体的に描けるデンマークの労働事情」の販売をNoteにて開始いたしました。
[内容紹介]
デンマークは、世界の中でもワークライフバランスが整っている国の一つと言われる。労働時間は短く、家族や子供との時間が十分に取れる、趣味に時間を費やせるなど、余暇も満喫している姿がデンマークの人たちの姿として描かれることが多い。OECDの指標においてもデンマークの働く世代の満足度の高さは際立っている。デンマークにおける充実した労働環境や生活環境はどのような仕組みによって成り立っているか分析していく。
本ホワイトペーパーは、こちらのNoteから入手いただけます。是非ご一読ください。
News, Service イノベーション・創造性教育, 多様性と企業マネージメント
2018年12月1日、北欧研究所によるホワイトペーパー「イノベーティブオフィス」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
[内容紹介]
イノベーションを生むオフィスとは、どのような場なのだろうか。イノベーションを生む場所は、どのような仕組みを持っているのだろうか。本「イノベーティブオフィス」は、ここ数年注目されてきているデンマークの「イノベーションの場」に注目し、イノベーションを生むための仕組みとしてアクセルレータやイノベーションセンター、また、働く人たちの創造性を刺激するイノベーティブな空間の提供で注目されるオフィスを紹介する。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
2018年10月23日、北欧研究所によるホワイトペーパー「なぜ、デンマークの幸福度は高いのか – 高福祉・高負担と国家財政から分析する要因と今後の課題」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
[内容紹介]
▲幸福な国デンマーク
デンマークは毎年国連が発表する『世界幸福度ランキング』の上位に位置しており、「幸福度が高い国」として日本では知られている。また、「ノルディックモデル(北欧モデル)」と呼ばれる社会福祉モデルによって、デンマーク国民が大学の授業料や医療費が無料などの恩恵を受けていることも有名である。ノルディックモデルの背景になるものは何か。デンマーク国民の幸福度と社会福祉がどのように関係しているのか。こういった問いに答えるべく本ホワイトペーパーでは、主に社会福祉(教育、労働市場、ヘルスケア)、税金、国家財政の3つの観点からデンマーク国民の幸福度について考察する。それに加え、これからのデンマーク国民の幸福を考える上で、デンマークが抱える社会課題や将来的な展望についても紹介する。
▲CONTENTS
01 はじめに
02 デンマークの社会福祉モデル – 高福祉
03 デンマークの税制度 – 高負担
04 デンマークの社会福祉における財政状況
05 結論
▲著者プロフィール
林 万理(はやし ばんり) 1993年生まれ。山口県出身。2017年に立命館アジア太平洋大学国際経営学部国際経営学科を卒業。『不幸ではないけれど、幸せではない』という気持ちを抱えていた中、大学2年生当時にデンマークが「世界で最も幸福な国」ということを知る。その謎を自分の目で確かめるため、2015年8月から1年間コペンハーゲン大学社会科学部経済学科に交換留学。留学時に北欧研究所でインターンをしながら、デンマーク国民の幸福やギャップイヤーに関するインタビュー・執筆活動を行う。関心のある分野は、ライフスタイルや北欧社会・文化など。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
2018年10月3日、北欧研究所によるホワイトペーパー「北欧のリビングラボ」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
[内容紹介]
デンマークやオランダなど欧州北部では、70年代頃から、市民などの利害関係者を巻き込みつつコミュニティ全体で実施する「参加型デザイン」と呼ばれるイノベーション手法が独自に提唱されてきた。当初は、弱者である当事者(搾取されている労働者)を巻き込むためという政治的な色彩が強かった参加型デザイン手法であるが、近年それら北欧で実践されてきた社会的参加型手法は、複雑性、 不確実性が高まる現代社会の社会課題の解決に有効な持続性を兼ね備えたイノベーション・アプローチであるとして国内外から注目されるようになっている。 提唱されてきた多くの手法は、年月を経てコミュ ニティでの活用における最適化が図られ、知見が蓄積されてきた。数々の参加型デザインの手法の中でも、コミュニティにおけるイノベーションと持続的発展を支える枠組みとして、近年注目されているのが、「リビングラボ」である。 本稿では、 北欧におけるリビングラボを中心に調査し、本稿で述べられる「リビングラボ」や「参加型デザイン」は、北欧のものを中心とした概念として扱う。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
2018年9月26日、北欧研究所によるホワイトペーパー「ニューノルディックフード」の予約注文販売をアマゾンにて開始いたしました。
予約注文頂いた方限定で、特別価格(100円)でご提供しております。こちらの販売記念キャンペーン期間は10月3日までの1週間になります。
[内容紹介]
世界のガストロノミー界に衝撃をもたらしたデンマーク発の新北欧料理。
本ホワイトペーパーは、新北欧料理の概略と解説、およびレストランガイドで構成されている。
レストランガイドは、北欧研究所の所員による実際の訪問経験をもとにビジネスで活用できる場所を前提にリストアップし、レストラン選択の判断材料として、日本人的観点からの主観的なレビューを掲載している。
皆様のインフォーマルビジネスツールとして活用いただきたい。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
2018年の秋学期の開始にあたり、新しく5名のインターン生が加わりました。
調査業務のアシストに加えて、メルマガやFacebookによるニュースの配信、当HPの更新などを担当していきます。インターン生のプロフィールはこちらから御覧いただけます。
2018年7月22日、北欧研究所によるホワイトペーパー「デンマークの循環型経済-これからの経済モデル、変化するビジネス形態」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
循環型経済やサステイナビリティの先進国デンマークは、エネルギーの効率化、再生エネルギー、環境に関連するイノベーション等でEU内でも注目されています。その背景には首都コペンハーゲンの「2025年までに世界初のCO2ニュートラルな都市になる」という宣言、再生可能エネルギーのシェア拡大、循環型経済への政府の積極的な関与があります。本ホワイトペーパーでは、近年議論されている循環型経済について、そのメリット、そして循環型経済の事例を紹介します。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
2018年5月30日、ホワイトペーパー「デンマークのフィンテック企業普及の背景」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
デンマークでは、キャッシュレス決済システムが年々広まっています。デンマーク中央銀行のデータによると、デンマークの現金支払い率は約23%。ほかのEU加盟諸国よりも現金使用率がはるかに低いことがわかっています。この背景には、デンマーク国内のフィンテック企業の台頭があります。本ホワイトペーパーでは、2018年現在でフィンテック発展を支えるデンマーク企業、組織を一覧にまとめています。
本ホワイトペーパーは、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
Japan In-depthに弊社の田中亜季が執筆した『国が支えるフリースクール フォルケホイスコーレとは? デンマークの「人を幸せにする仕組み」5』
が公開されました。本記事はデンマークの成人教育機関フォルケホイスコーレについて書かれた記事です。是非ご一読ください。
Japan In-depthに弊社代表安岡美佳と田中亜季が執筆した「デンマーク 広がる電子化の波」が公開されました。本記事はデンマークにおける電子決済の広がりや銀行の取り組み等について解説しています。是非ご一読ください。
2018年3月18日「デンマークの障がい者雇用」の販売をアマゾンにて開始いたしました。
高福祉国家である北欧・デンマークでは、企業に障がい者を雇用する義務や法定雇用率などは定められていません。しかしながら、法定雇用率を達成する為だけに企業内で障がい者に適した業務を探す、または障がい者のニーズに応じた設備や環境を整えるなどと言ったアプローチとは全く異なる「dis-ability」(障がい)を「special-ability」(特別な能力)と捉える新しいビジネス形態独自の動きが見られるなど、独自の方法で、障がい者雇用を促進する様相が見られます。本レポートでは、そのようなデンマークにおける障がい者雇用の現状をまとめています。
本レポートについては、こちらから入手いただけます。是非ご一読ください。
エネフロ(Energy Frontline)に弊社代表安岡美佳と三木拓弥が執筆した「電気利用がエコになる 欧州データ最前線」が掲載されました。本記事はデンマークに設置される国際IT企業のデータセンターや洋上風力発電について解説しています。是非ご一読ください。
Huaweiのウェブサイトに弊社代表安岡美佳が執筆した「データの活用で快適な都市生活を実現するデンマークのスマート交通」が掲載されました。
デンマークで急速に進む交通のスマート化について解説しています。是非、ご一読ください。
新年あけましておめでとうございます。
皆様、良い新年を迎えられたでしょうか。
2017年は、世界のいく先がより不透明に感じられる種々の出来事が相次いで起こり、北欧の小国も世界的な流れに翻弄されているように思われることが多々ありました。移民や難民の問題も解決の糸口が出ているとは言いがたく、民族間の対立もより深まってしまっているような印象も受けます。一方で、日本とデンマーク間を見ておりますと、また違った国際的な動きが見られたと言えます。2017年は、デンマークと日本の国交樹立150周年として、日本とデンマークを舞台に、外交・産業・芸術・学術のあらゆる分野で約70もの交流やイベントが実施され、デンマークにおける日本への関心もより高くなっているように感じられました。金唐革紙のワークショップや日本酒の紹介イベントを始め、いくつかのイベントには北欧研究所も関わり、微小ながら両国のより良い関係の構築に貢献することができたのではないかと感じています。
北欧研究所は、引き続きデンマークの文化政策、ビジネスとアートの融合、フィンテックなど、興味深いイノベーションのタネに注目し、今まで以上に多種多様な点から北欧情報を調査分析し、日本と北欧のよりよい関係性に貢献していきたいと思っています。さらに、日本と欧州のEPAの締結が見込まれ日本への関心が高まっている現在、北欧の人達の日本への興味の種が育って行くように、文化・経済・政治の分野からサポートをしていく所存です。
日本からは、北欧は幸せな社会という評価を得ています。2017年には、デンマークでよく使われる「ヒュッゲ」が世界的な注目を浴びました。私は、13年の北欧生活を経て、現在、本当に幸せに満ち溢れた社会というのは、コミュニティの住人が模索し努力を重ねた結果、初めて勝ち取れるのものであり、継続して努力し続けることで維持できるものだと考えるようになりました。私たち北欧研究所は、そんな北欧の試行錯誤から学べることを伝達すること、そして、日本がよりよい幸せな国となるように、日本流の「幸せのかたち」を模索できるような幸せへのヒントを提供していきたいと思っています。2018年が、多くの人が、幸せの形をそれぞれの社会がそれぞれなりに模索し始めた年と、のちの社会的で言われるようなそんな新たなきっかけになってほしいと切に願っています。
2018年も、北欧研究所(japanprdic)に変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
北欧研究所代表 安岡美佳(やすおか みか)
昨年の9月から12月までの3か月間インターン生としてお世話になりました。
私がインターンを始めた理由は、ただ日々生活して感じるだけではなく、デンマークについてより深く知りたいと思ったからでした。
結果、デンマークについて知識を得たのはもちろんですが、ただデンマークはいい国だっただけで終わっていただろうことが、インターンをしたことによってその背景にはどういった取り組みがあるのか、自分はデンマークから何を学べるか等、今まで興味のなかったことや新しい考え方を学ぶきっかけにもなりました。
例えば移民や難民について調べた際に、以前までこれらの分野に興味がなかったものの、調べていくうちに興味が出てきて、実際ドイツやデンマークの人たちに彼らを受け入れることをどう思うのか聞いたことで、日本では感じることができなかった思いを知ることが出来ました。
自分の興味のあった自動車の分野でも、自分がしたいことをどんどん挑戦させてもらえたことで、自分が知りたかったもの以上のことを得ることが出来ました。
住んでいた町から毎週コペンハーゲンに行くのもひとつの楽しみでしたが、日本から様々な思いでデンマークに来ている方たちと交流することもとても刺激的でした。
私自身日本が好きで今後も日本に住んでいたいと思っています。しかしこうやってたまに海外で生活したり、全く違う考え方を持っている人たちと関わることで、自分自身の成長に繋がっていくとも実感しています。
今回、インターンを通してそういったことを学ぶ機会を本当にたくさん与えてもらいました。3か月という短い間でしたが、得たものは多く後悔なく日本に帰国できました。今後は日本でこの経験を生かしていきたいと思います。
短いながらもご指導、アドバイス、日々の生活の何気ない話まで、素敵な機会をいただき、本当にありがとうございました。
2017年3月から12月までの約10か月間、北欧研究所でインターンとして働いた。
インターンを始めたきっかけは、以前コペンハーゲン大学に留学し、同じくインターンを行っていた先輩に話を聞いて興味を持ったことであった。インターンを通して新しい経験をし、人脈を広げ、何よりデンマークについて深く知ることができると考えた。北欧研究所での経験は私にとって新しく刺激を与えてくれたものばかりであり、多くのことを学び、私よりもはるかに人生経験が豊富な人や幅広い分野に興味を持った人と出会う機会を与えてくれた。通常の業務は主に、企業から調査依頼を受けて行う委託調査、Facebookページでのニュース更新、デンマークの社会や文化に関して個人の興味・関心に沿って調査する個人テーマの三つに分かれた。それまでインターンをした経験がなかった私は、インターンとして働くということはどういうことかを知り、さらに調査を進める中で、文献やウェブサイトの調査方法、レポート・エッセイの書き方、デンマークの社会制度について学び、それを日本の現状と比較・検討して問題意識として捉えることもあった。またエッセイ執筆を通して、今までは文章を書くことが苦手だったが、文字に起こすことで自分の考えを整理できそれに対する理解が深まることを学んだ。
様々な活動を通して一番印象に残っているのは、金唐紙のワークショップである。そこで修復師という仕事や日本の伝統工芸の現状について知った。私でも知らなかった日本の文化・技術が遠い国デンマークで注目を浴び大切に保護されている現状に驚き感銘を受けたとともに、世界に誇るべき日本の文化や伝統を、日本人を含めより多くの人に知ってもらいたいと強く感じた。そしてデンマークの文化政策・制度に加えて保護活動をする修復師についても興味を持ち、その後個人的に調査するに至った。
さらに長期休みには、無理を言ってお休みを頂き、ヨーロッパ一人旅、ボランティア活動を経験する機会を頂いた。そこでは、大学での学びを通しては得ることができなかったこと、特に、自分自身の好きなこと、得意なこと、苦手なこと、長年悩みとして抱えていたことに気づき、時間をかけて向き合うことができた。
北欧研究所での業務は、担当を割り当てられて取り組むものもあるがほとんどは「やりたい」と手を挙げれば、周囲のサポートを受けながら自分で時間を管理して取り組みやすい環境にある。さらに、幅広いコネクション、長年の経験や知識、ノウハウが備わった環境において、自分の興味・関心に沿ったことを調査できることはとても恵まれているし、貴重であると思う。その中で、時間をどう活用してどれだけ自分のやりたいことを実行できるかはその人次第で、限られた時間の中でも行動に移して努力したものは結果として実を結ぶことを実感した。10か月間は長いようであっという間であったが、失敗や葛藤も経験しながら行動して学んだことは、自分にとって何よりも大きな収穫となった。
最後になりますが、長年の経験やノウハウを駆使して私たちに新しい体験をする機会を与えてくださり、お忙しい中時間を割いてレポートやエッセイのチェック、アドバイスをしてくださったスーパーバイザーである上司の方には感謝しかありません。そして、北欧研究所の活動を通して出会った方々、一緒にインターンとして働き、モチベーションを高く持ち楽しい時間を共有してくださった皆様、本当にありがとうございました。
9月18日から20日にかけてコペンハーゲンで行われた、日本の伝統工芸「金唐紙」のワークショップに北欧研究所のお手伝いとして参加した。日本の金唐紙研究所で活動する職人の池田氏と奥様がデンマークに招待されて、デンマークで活動するアーティストや学芸員、修復師の方々、一般人に向けて、実際に金唐紙制作の作業工程が体験できるワークショップ、金唐紙の歴史についての講演を行った。
デンマークで伝統工芸や建造物等の修復を行う修復師の団体が今から一年ほど前、コペンハーゲン中心部のKongs Nytorvのお屋敷で日本のものと見られる金唐紙の壁紙を発見した。金唐紙についてはどのように作られて西洋に技術が渡ったのか等正確な情報が得られておらず、更に知識を得たいという目的のもと今回のワークショップ実現に至った。金唐紙を制作するには、和紙に金箔を張り付けたものを竹や花がモチーフとなって彫刻されている木製の型に押し付けて、ブラシを用いてたたき、模様を紙に押し付ける。模様が浮き出てきたら最後に色をつけ、漆を塗って乾かして完成。私も初めて体験させてもらったが、特に紙に模様をつけるためにブラシでたたく工程では、長時間ブラシで叩き続けなくてはならないのと、ブラシが紙に対して垂直に当たらなければきれいに模様が浮き上がらないので、逐一確認しながら叩かなければならない点が大変であった。模様が描かれている木製の型は、新しい作品を制作する場合や修復の際に型が見つからないものや古い型で使えないものであった場合に、池田氏がご自身で彫刻するようである。今回は池田氏が日本からいくつか持参したものを使用した。
このワークショップに参加するまで金唐紙を見たこともなく知識もなかった私にとって、遠く離れたデンマークで日本の伝統技術を守ろうと興味を持ち、保存のために活動している団体が存在すること、そして実際に作品が何百年も保存されていることに大変感銘を受けた。さらに、デンマークの修復師の活動や国を挙げた伝統芸術への支援制度の充実性に興味を持ち、日本の伝統工芸継承の現状や問題点、将来についても考えさせられることが多くあった。特に金唐紙は各工程で日本独特の和紙や漆が使われていて、例えば最初の行程で使う和紙に関しては、日本原産のものは丈夫で、木製の型に押し付ける際にも破損しないような強さを持っているが、海外のものは日本のものに比べて薄く、それほど丈夫ではない。実際に、デンマークで壁紙として使われている金唐紙の修復の際には、海外のものが付け足されている場合もあると修復師の方から伺った。デンマークの修復師の方々はその点も理解していて、日本の和紙や漆に対する知識も持ち合わせており、できるだけ日本のものを使おうとしている姿勢を感じた。日本の伝統技術が広く海外にまで伝わりより多くの人の目に触れられることは、製作者にとっても私たち日本人にとっても誇り高く喜ばしいことであると考える。しかし、正しい知識や技術が何らかの過程で伝わった先にとって都合がよく便利な形に変化されてしまったり、製作者や伝統継承者の作品に込めた想いが本来とは違う形で受け取られてしまう可能性も考えらえるかと思う。その中で、今回のように実際に技術を継承する方と修復師の方々が直接交流し、本来の技術に対する知識を深められる場を設けることは、今後伝統技術を継承していく上でとても重要な役割を果たすと感じた。また、今回の池田氏のように技術を伝える側にとっても、日本の伝統芸術という視点から見たときに、何が正しく理解されていてどのような点で誤解が生じているのか、これからの継承に関する課題や解決策を考えるといったような問題意識に繋げられると感じた。
デンマークでは修復師を養成する学校があり、厳しい審査を通過したアートスクールの学生が伝統工芸や建築物の修復を行ったり、政府が資金を援助して国全体で芸術を継承していこうという動きがある。しかしながら日本を考えてみると、伝統工芸の後継者の人手不足や社会の関心の低さ等の問題が山積している。さらに、世界の中で見ても政府からの助成金は少額で、支援に力を入れているとは言えない。今後デンマークの修復師の活動や歴史、教育システムについて調査していく中で、日本の伝統工芸の現状、問題点への解決策とを関連付けて考察していきたいと考える。
7月の後半から八月の後半まで約一か月、長期休暇を利用してデンマークのステンズバックという地域でボランティアをした。春セメスターの授業が6月で終わり、約3か月の長期休暇を、日本や留学先の大学生活ではできないようなことを経験し有意義なものにしたいと考え、ボランティアをすることにした。
ボランティアをしていた地域はユトランド半島の南、ドイツとの国境に近くに位置し、留学生活で普段住んでいるコペンハーゲンとは全く違う、正直に言って超がつくほどの田舎であった。周りには牧場や森が広がり、一番近くのスーパーまでは歩いて40分はかかるほどである。ボランティアをしていた施設は、ヨガやピラティス等をしながらベジタリアン生活を通して心と体の健康を目指すというコンセプトのもと、毎週20人ほどのゲストを受け入れ、ゲストのために食事の準備をしたり掃除をするのが主な仕事であった。この施設を選んだ理由は、私のほかにボランティアが多くいること、世界中からボランティアが集まっていたこと、ボランティア同士のアクティビティが活発で自然の中で暮らせること、ベジタリアン生活を経験して見たかったことであった。ボランティアは私のほかに15人ほどいて、デンマークのほかに、スペイン・オランダ・レバノン・メキシコ等世界中から集まってきていた。一日約5時間の仕事でおおまかに朝・昼・晩の三つのシフトに分かれて働いた。さらに、仕事が終わった後や夜にはみんなで集まってゲームをしたり、映画を見たり、パーティをしたりと交流が活発であった。
この施設では毎朝ボランティアが全員集合してミーティングをした後、天気が良い日は外で、雨や天気が悪いときは体育館の中で、皆で輪になって手をつなぎ、一人ずつその日の気分(幸せ、悲しい、良く眠れた、疲れている等)を言うのが日課であった。はじめはこの習慣に驚きと戸惑いを感じ、何を話せばよいのかわからなかった。自分の本当の気持ちに向き合おうとはせずに、当たり障りのないことや皆が聞いて無難だと思うこと(よく眠れた、今日も仕事を頑張りたい等)を話していた。それはおそらく、自分の本当の気持ちを話したら周りがどう思うかを気にしていて、自分の気持ちに向き合うことを避けていたからだと思う。思えば私は今までの人生で、他人の気持ちばかりを気にして我慢した結果、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまうことがあり、それが悩みでもあった。たとえば、数人で分担して作業をするときに、自分が何をしたいかよりも他の人が何をしたいかを先に聞いて、自分がやりたくない役割でも引き受けてしまう。最初はその役割をこなすものの次第にそれが嫌になってきた場合でも、自分の気持ちを言ったらどう思われるか心配したり、自分が我慢することによって周りが上手くいくのなら自分の気持ちは言わなくても良いだろうと自分の中で完結させてしまったり、また時には周りはどうして気づいて交代しようとしてくれないのだろうかと周りのせいにして一人で考え込んでしまうときもあった。覚えている限りかなり幼い時からこの癖が体に染みついていたので、大人になるにつれて自分が本当は何がしたいのか自分の気持ちがわからなくなってしまうことが多々あった。しかし約一か月間毎朝この習慣を続けていくうちに、次第に自分の気持ちを他人の前で素直に表現し、言葉にできるようになった。それは、自分の気持ちに正直に向き合い自分の気持ちを尊重することは大切だということを学んだからである。今までは自分の気持ちを正直に言って周りに心配をかけてしまったり気を遣わせてしまうのは悪いことだと思っていたが、自分が何も発信しないで一人で抱え込むことによって我慢したり嫌な気持ちになることが、逆に他人に気を遣わせたり、周りにその悪い雰囲気が伝わってしまうということに気づいた。それまでは、「自分の視点から」他人の気持ちに配慮して気を遣うということしかできていなかったのが、今では「他人の視点から」その人の気持ちに寄り添うことができるようになったと感じる。そのことに気づき、自分の気持ちに本当の意味で向き合い、素直にそれに従うことができるようになるのは私にとって簡単ではなかったが、周りのボランティアの人が支えてくれたおかげで自分の凝り固まった考え方を変えることができた。自分が今まで悩んでいたことを話すとみんな親身になって相談に乗ってくれ、アドバイスをくれた。こんなことで悩むのは恥ずかしい、今更正直に言う必要もないと思っていたのが、みんなが私のありのままの姿で受け入れてくれて、自分が一番大切なんだよということを教えてくれたおかげで、正直な自分を表現することに抵抗を感じなくなった。
このボランティアの経験では、新しい視点を得て、何よりも自分自身がさらに成長できたと感じられた。素晴らしい人たちと出会うことができて、彼らの良いところをたくさん吸収できたのではないかと感じている。たくさん相談にのってもらった中で一番印象に残っているのは、何か選択をするときに自分が何をしたいのか、本当の気持ちがわからなくなったときに、自分に問いかけるべきことがあるということ。それは二つあって、まず、なぜ自分はそれをしたいのか、そして次にそれをしたら自分はどう感じるのかということである。その時に注意するのは、「こうするべき」や「こうしたら他人が喜ぶから」等、自分の気持ちではないことは答えにはしてはいけない。普段からこれが自然にできている人にとってはわざわざ考えなくても済むようなものであると思うが、私にとってはこれを自然にできるようにするには練習が必要であった。しかしその習慣をつけることによって自分の思考方法が変わって、今までとは違った視点を持って物事を捉えられるようになり、些細な事でも我慢することなく自分に正直に行動できるようになった。ボランティア活動では多くの出会いと新しい発見があり、自分の成長へとつながる価値あるものとなった。
エネフロ(Energy Frontline)に弊社代表安岡美佳と津久井柚花が執筆した「不都合な真実」が掲載されました。本記事は、デンマークの電気自動車を含めた自動車利用事情についての驚きの事実を綴ったたものです。ぜひご一読ください。https://ene-fro.com/article/ef34_a1/
北欧研究所は、デンマークコペンハーゲン市の修復士からの依頼を受け、日本における金唐革紙調査サポートを2016年秋、その後、日本の有識者を招聘しての金唐革紙の制作ワークショップのイベント立案、2017年9月18日から20日のイベント通訳を行いました。 More
北欧研究所では、現在、若干名の研究員(経済・政治系, 情報デザイン)を募集しています。2018年6月締め切りました。
応募資格;経済・政治分野、もしくは関連分野で修士号を取得(取得見込み)していること。デンマークでの労働許可を持っていること。
勤務場所:北欧研究所;コペンハーゲン近郊
職務内容:デンマークや北欧における経済・政治関連事項の調査、分析、レポート執筆
労働時間:週に15時間程度
雇用期間:3ヶ月の試用期間、後、単年度契約
給与:月給制(学歴・職歴・言語能力によって月額を決定)
応募書類:履歴書、志望動機をjob@japanordic.comに送付ください
応募締切:適任者が決まり次第終了します。
応募資格;情報デザイン系の知識を有していること。インデザイン、その他Adobe系のソフトを日常的に利用していること。デンマークでの労働許可を持っていること。
勤務場所:北欧研究所;コペンハーゲン近郊
職務内容: 北欧研究所の情報メディア戦略
労働時間:週に7-15時間程度
雇用期間:3ヶ月の試用期間、後、単年度契約
給与:月給制(学歴・職歴・言語能力によって月額を決定)
応募書類:履歴書、志望動機をjob@japanordic.comに送付ください
応募締切:適任者が決まり次第終了します。
News, Service スマートシティ, リビングラボ, 北欧ICT事情, 幸福
北欧研究所が調査に一部協力した日本総合研究所のレポートが公開されました。「ユーザー・ドリブン・イノベーションによるスマートな街づくりに向けて-海外における「スマートシティ2.0」への取り組み-」と題して、調査部主任研究員の野村敦子さんが執筆されています。海外における取り組み事例としてデンマークのコペンハーゲン市の例がフィーチャーされており、デンマークでは市民が積極的に街づくりに参画していることが見て取れます。ぜひ、ご一読ください。
北欧研究所は、3月に新しく次のホワイトペーパを発行します。「デンマークの保育・教育」「デンマークトップ50企業」「デンマーク発祥ファッションブランドリスト」「デンマークのテレビ」「デンマークの主要新聞社」「デンマークのセクシュアルマイノリティに関する法制度」。
詳しくはこちら。
高福祉国家である北欧・デンマークでは、企業に障がい者を雇用する義務や法定雇用率等は定められておりません。近年社会保障費削減の動きもあり、障がい者の就労を促すための政策は見られますが、 義務化には至っていないのが現状です。
デンマークの実際の企業における障がい者雇用の動きをみると、日本とは少々様相が異なっています。特に興味深いのは、法定雇用率を達成する為だけに企業内で障がい者に適した業務を探す、または障がい者のニーズに応じた設備や環境を整えるなどと言ったアプローチとは全く異なる「dis-ability」(障がい)を「special-ability」(特別な能力)と捉える新しいビジネス形態が存在することがわかりました。
本レポートは、そのようなデンマークでの障がい者雇用促進の為、一般企業とビジネス展開を行うソーシャルビジネス事例を調査し、報告書としてまとめています。調査は、収益を十分にあげ堅調な成長を見せるソーシャルビジネス企業が対象となっています。
目次(現在の予定)
【スポンサー募集概要】
本調査はスポンサー企業の皆様のご希望・ご要望に合わせて調査対象の選定・報告書の作成を行います。特定の障がい者雇用に関する関心項目などがある方は、是非スポンサーをご検討ください。また、作成された報告書の購入のみも可能です。
北欧・デンマークでの障がい者雇用ビジネスモデルに関心のある企業の皆様、また研究者の皆様は是非ご連絡ください。各種お問い合わせは、下記担当までご連絡をお願いいたします。
sofie@japanordic.com