幸福とは? Vol.4 ギャップ・イヤーについてのインタビュー(3)
連載中の記事、『幸福とは? ギャップ・イヤーについてのインタビュー』シリーズに引き続き、今回は、大学入学前に1年間のギャップ・イヤーを取ったコペンハーゲン大学日本語学科3回生のJosefine Amalie Prætekjær (ヨセフィネ・アマリエ・プラステケア)さんに彼女の素晴らしい経験と幸福観についてインタビューをした。以下の文章は、B:林、J:ヨセフィネ の会話体とする。
B: どのような経緯でギャップ・イヤーを取りましたか?
J: ギャップ・イヤーを取る前の私は一人で物事を決断することができなかったし、シャイだから他人と積極的に関わることのできない性格だった。高校卒業する前から、なんとなくギャップ・イヤーを取りたいと思っていて、当時は東日本大震災の直後だったから、日本でボランティアをしようと考えていた。でも、なかなか決断に踏み切ることができず、当時お付き合いしていた彼の「イスラエル行かない?」という誘いに、とりあえずついて行ったのがきっかけ。特に明確な目的は無かった。
B: イスラエルでは、どのようなギャップ・イヤーを経験しましたか?
J: キブツという地域に4ヶ月ほど滞在した。皿洗いや洗濯の仕事を朝の7時から昼の1時までして、その後、プールで泳いだり、観光をしたり、イスラエル語を習った。一番貴重な体験だったのは、ボランティアリーダーをしたこと 。1人で何かをすることにそれまで、ずっと恐怖を感じていた。でも、ボランティア活動を通して、彼らと団結することで恐怖を乗り越えることができた。家族になれるくらい団結することができた。
B: ギャップ・イヤーの中で大きなターニング・ポイントはありましたか?
J: それは、一緒にイスラエルに渡った彼氏と滞在期間の最初の1ヶ月で別れたことだと思う。それまで、彼とずっと行動を共にしていたから、一人で何もかもしなければならなかったのが、とにかく怖くて仕方なかった。それに、私はシャイな性格だから、何をするにもいつもためらってばかりだった。でも、残りの滞在期間3ヶ月を何もしないまま終わらせたくなかったから、ボランティアに参加して、そのメンバーと積極的に交流しようとした。
B: ギャップ・イヤーを通して気づいたことはありますか?
J: イスラエルで分かったことは、物事を急いでやることはよくないということ。私はデンマークでは中では、かなり校則が厳しくて、大学進学率が高い高校に通っていたから、高校生時代は、勉強や自分のキャリアに対する大きな重圧を感じていた。「高校卒業後は、ストレートに大学に進学しなさい」という重圧。やりたいことについて余裕を持って考えることができなかったのは私にとって辛いことだった。
B: ギャップ・イヤーは日本人にも幸福をもたらすと思いますか?
J: ギャップ・イヤーは、精神的に解放されるため、そして自分を成長させるために大切な時間。同時に、自分の強みと弱みをより深く知ることができるチャンスだと思う。 自分のことを知らなければ、将来自分は何ができるか分からないし、大きな決断をすることは難しい。だから、ギャップ・イヤー取ることは、単に自分の性格を知るだけではなくて、自分自身の将来の意思決定を良くすると思う。日本人は、所属したいコミュニティや周囲の環境に応じて、自分がどうあるべきか決めていくよね?それに比べると、デンマーク人は、かなり個人主義的かもしれない。本当に何をしたいかを自分を主体として考える。その中で、自分と社会の距離を落ち着いて見ることができる。ギャップ・イヤーは自分をしっかり理解することで、他の人や社会、そして世界へと視野を広げていくことができる大切な時間。それも、リラックスした状態で。日本人はもっと、自分やりたいことを見つけて、それに集中した方がいいかもしれない。デンマーク人がそうするように。
B: ありがとうございました。昨年の12月にインターンシップと早稲田大学での交換留学を終え、デンマークに帰国したヨセフィネさん。ギャップ・イヤーで、1人で行動する時のためらいや恐怖の乗り越え方を学んだ彼女の表情は生き生きとしている。そして、大学卒業に向けて、大きなエネルギーで、自らのやるべきことに集中しているように感じられる。彼女の今後の活躍が楽しみだ。
過去記事
幸福とは? Vol.1 ギャップ・イヤーについてのインタビュー
幸福とは? Vol.2 ギャップ・イヤーについてのインタビュー(2)
幸福とは? Vol.3 bOblesの遊べる家具から見るデンマーク人の幸福観