生徒たちとデザインする中学校の庭 “Our Project”
コペンハーゲン近郊にあるフォルケスコーレ(小中一貫学校の義務教育機関)の庭をデザインする機会を頂いた。この話は普段仲良くさせて頂いているフォルケホイスコーレ(成人教育機関)のひとつ、クローロップホイスコーレから間接的に頂いたため、直接フォルケスコーレの方と話したわけではないが、現在使われていない庭が校舎裏にあり、そこを子どもたちが遊んだり野外学習したり出来るような場所として生まれ変わらせてほしいという要望のようである。環境大国としての自覚を持って、自然との共生を体験を通して子どもたちに教育しようという考えなのだろう。同様の希望を持っているフォルケスコーレは少なくないようだという話もクローロップホイスコーレの講師であるガルバ氏から伺った。私に直接その話が来たということは、なるべく低予算で実施したいというクライアントの思いが予想できる。したがって、生徒の家庭にある廃材などを募集して、素人でも施工できるようなデザインを考え、フォルケスコーレの生徒や、クローロップホイスコーレの学生などを交えて皆で施工するという流れをつくり進めていきたい。
日本ではバブル期に起きた箱物行政への反省から、最近では公共事業の際にはパブリックミーティングを開き、なるべくプロジェクトの初期段階から地元住民などに議論に参加してもらい設計を進めていくという手法が盛んになってきている。このようなプロジェクトの進め方は、実はデンマーク人が大得意としているという思いは、昨年夏に実施した建築スタディプログラムの経験以来強くなる一方である。また、建築を専門としていない一般の学生や、世代の違う人達をプロジェクトに巻き込んだ際にも同様のことが言えるのかということについても興味があり、今回はそれを確かめる絶好の機会となりそうである。
日本のコミュニティデザインの現場において、もっとも重要であり最も乗り越えるのが困難な壁の1つとして、デザイン対象地域の住民たちが当事者意識を持って事業に取り組めるか否かという壁があると聞く。デンマークは個人単位で観察しても自律した性格の人は多いように思えるし、自給自足しているコミュニティが多く存在していることからも当事者意識をもって事業に参加してもらうことは日本で行うほど難しくないのではないかと期待しており、これも今回のプロジェクトで確かめることが出来そうである。
1月25日にキックオフレクチャー/ミーティングをクローロップホイスコーレで行った。2月から3月にかけてデザインをし、4月から5月にかけて施行準備、施工を行う。このプロジェクトを「Our Project」と名づけ、初回レクチャーではプロセス初期段階からクライアントである学校(教師)、エンドユーザーである生徒に関わってもらうことの大切さを説明し、いかにしてそれらステークホルダーを巻き込めるかということについて話し合った。これから毎週月曜にクローロップホイスコーレにてミーティングを行うことが決まり、近い将来クライアントやエンドユーザーと共にプロジェクトを進行していく予定である。