EUに関する国民投票について(インタビュー2)
コペンハーゲン大学3年のマヤ・ルンゴード(Maja Lundgaard)さんに国民投票についてのインタビューをさせてもらいました。
「国民にとってEUって何をやっているのかわからないミステリアスなものだと思うの。政治を勉強している私だってわからないところがたくさんあるんだもの。」と、等身大の学生の意見を聞かせてくれました。
国民投票の概要や歴史的な背景については別記事にて掲載しておりますのでご参照ください。
以下会話形式で記述いたします。(A:宮崎、M:Maja)
A: 今回の国民投票に賛成/反対どちらを投票しようと思っていますか。
M: まだ完全には決めていないですが賛成に傾いています。理由としては、賛成が勝った場合には、デンマークはEUと協力する分野を選ぶことができますが、反対が勝ち欧州刑事警察機構のメンバーでなくなると、EUとの協力自体ができなくなるからです。そして賛成という結果は、EUに対して「これからデンマークもEUと協力していきたい」というメッセージになると思います。
A: 現在のデンマークのEUに対するコミットメントは十分ではないと思いますか。
M: デンマークはいくつか適用除外を受けているので、全くほかのEUの国と同じとは言えません。しかし、賛成に投票するからといってすべての分野で全く同じに協力すべきという意味にはならないと思います。
A: 今回の国民投票が行われる時期についてはどう思いますか。
M: もしかしたらあまりいい時期ではないかもしれません。財政危機や難民危機を経て、今のEUは人々にあまり人気とは言えないからです。ただ、デンマークがEUとの協力を広げていくべき時期にあるという意味では、良いタイミングなのかもしれません。どちらの面もあると思います。
A: 反対が勝った場合はどうなるとおもいますか。
M: デンマークとEUの関係は難しいものになると思います。現在もデンマークは適用除外でEUと距離を置いていることを理由に、重要な交渉の場や会議に呼ばれないことがあります。さらに反対が勝てば、デンマークがこれ以上EUとの関係を築きたくないというメッセージを発信することになります。これからEUとどうなりたいかを国民が選ぶ投票になると思います。
A: 反EUの声が大きくなっているのはなぜだと思いますか。
M: EUがグローバルな問題に対して十分に解決しきれていないことへの不安からだと思います。また、自国の政策は自分で決めたい、主権を失いたくない、というのはとてもわかりやすいメッセージであることも、支持が広がる原因の一つかもしれないです。
A: 大学生と世論の間に意見のギャップがあると思いますか。
M: あると思います。政治学科の学生はほとんどが賛成と投票すると思いますが、世論としてはEUに対する不安も大きいと思います。なぜなら、多くのデンマーク人にとってEUが何をしているのかはわかりづらく、ミステリアスなものだからです。政治を学んでいる私にとってもわからないところがたくさんあります。今回の投票で賛成側の政党は、欧州刑事警察機構にデンマークが参加し続けるか否か?犯罪に対して一国のみで立ち向かうか、EUとともに立ち向かうのか?と投票運動を行っており、多くの国民はそれだけが争点だと思っています。しかし実際に含まれている、他の22の項目は注目されておらず、知らない国民がほとんどでしょう。私も、このインタビューを受けるから調べましたが、それまでは詳しい内容は知りませんでした。
A: 国民投票に関して、もっと多くの情報が発信されるべきだと思いますか。
M: 私はもっと情報をほしいと思いますが、国民は、デンマークの投票率はとても高いですが、政治にそこまでの興味を持っているかはわかりません。しかし、私がいくら政治に詳しくても、詳しくない人と一票の価値は同じですし、投票結果は国民全員に影響するものなので情報が増えたほうがいいかもしれないですね。
A: そのためにメディアがもっと果たしていける役割があると思いますか。
M: マスメディアは、第一に視聴率が高く大衆受けしやすい形で情報を発信し、情報量はその次なので、単純化して発信するものだと思います。発信されている情報が偏っているとは思いませんが、新聞を見ても1行だけ読む人がたくさんいる中で、人々にわかりやすくするためにはシンプルにするしかないのだと思います。さらに情報が欲しければインターネットを使わなければならないので、テレビや新聞ができることはもっとあると思いますが…。わかりません。
A: 現在のデンマークとEUの関係についてどう思いますか。今回の投票を含め、適用除外をなくしていくべきだと思いますか。
M: 将来的には適用除外がなくなるのがいいのかもしれないですが、今のデンマークは難しいと思います。様々な危機を経てEUへの信頼と支持は揺らいでいます。しかし、そもそもEUは経済的な関係を主として始まったものであり、財政危機や難民問題の対処のための機関ではなかったことも考慮して、EUが組織としてさらに成熟していくべきである一方で、デンマークもEUとの距離を縮めようとしているというメッセージを送り続けることが大切だと思います。
以上
今回の国民投票の結果によって、どのようなメッセージをデンマークが発信することになるのか、半月後の投票結果がとても気になりますね。また、今回の国民投票のインタビューを進める中で、この事例だけでなく政治一般として、国民のために行われ国民が影響を受ける政治であるにもかかわらず、内容について国民の理解が追い付いていない、あるいは政治家やメディアも完全に理解されることを求めていないことについて考えさせられました。
引き続き、社会民主党ののユースや、政治家の方へのインタビューを掲載していく予定です。ぜひ読んでみてください。