デンマークで建築デザインを学ぶ JaDAS2016
北欧研究所では、日本人学生と北欧人学生が建築文化を交流する機会を提供します。プログラムを通して、参加者は建築デザインの成果物だけでなく、デザインプロセスや学び方も含めた、日本と北欧の建築文化の違いを相互に学びます。
日本で建築を学んでいる学生を対象に、デンマークで8月10日から31日にかけてスタディプログラムを実施します。プログラムは、デザインプロジェクト、建築見学、レクチャーの3つの軸によって構成されています。デザインプロジェクトは現地の学生と交流しながら、チームで作品を作り上げます。デンマーク王立アカデミー建築コースの一部をメインの活動場所として、現地で学ぶ学生と協働でコペンハーゲン市の組織にデザイン提案を行います。
同時に、現地の小学校や図書館などの公共施設を見学し、建築がいかにして周辺環境や街全体と関係を気づいているのかを学びます。また、現地で活躍する建築家の方を講師として招き、これまで携わってきたプロジェクトについての説明やデンマーク流の設計プロセスに関してレクチャーしていただきます。日本人建築家の方からは、日本人建築家として海外で働くことに関して思うことを聞く機会も設けます。
海外の建築デザインの現場を訪れたり、デンマークで空間がどのような意識の中でデザインされているかをデザイン課題を通して学んだりすることで、自分の将来設計により広い視野を持ったり、日本を客観的に見つめ、日本の良いところや改善すべきところを発見するきっかけになれば幸いです。
Sundholm
– ホームレスの街 –
コペンハーゲン市の一画、スンホルムの公共団体にデザインの提案をします。
コペンハーゲン南部にSundholm(スンホルム)と呼ばれる街があります。スンホルムは1900年代前半から2000年ごろまでのおよそ100年間、ホームレスやアルコール中毒者などの社会不適合者とみなされた人たちをデンマーク社会から隔離する地域として存在していました。当時スンホルムは、地域内で全ての生活が成り立つよう様々な機能が配置されかつ地域の境界線に沿って堀が整備された、市から完全に孤立したホームレスの街でした。しかし、この100年の間に社会福祉の国と呼ばれるようになったデンマークは、スンホルムの在り方を考えなおし、その役割を社会的弱者が社会復帰するための支援地域へとシフトさせました。堀は埋められ、街中の施設は開放され、結果として様々な組織が街内に移転し活動するようになりました。
コペンハーゲン市が管轄する組織も、スンホルムで社会的弱者を支援する活動を開始しました。スンホルムの住人が社会復帰できるよう住人に対しアクティビティを提供する組織や街内の住宅施設や、そこに滞在する住人のマネジメントをする組織など、別々の組織が支援を行っています。Aktivitetscentret Sundholm(アクティビティセンター)は、住人に対し5つの社会活動を提供しています。アクティビティはすべて自由参加で、住人は参加したい時にだけ参加すれば良いため、参加者が誰もいない日もあります。しかし、参加した時には一握りの給料と「社会の役に立った」という実感という対価を手に入れることができ、この対価を受け取る日々を重ねることで、住人は少しずつ社会復帰できるようになるのです。今回のプログラムでは、アクティビティセンターを始めとした複数の組織に対し、スンホルムをより良い地域にするためのデザイン提案をします。
街の南西部の境界には、以前スンホルムに住んだことのあるアーティストによって制作された柳のインスタレーションがあります。有機的にうねりながら、花を植えたり野菜を育てたりできる窪みを作ったり、人が通り抜けできるようなアーチを作ったりすることで、街外の人を中へと誘導し、社会統合を促しています。一方で、一般社会に戻ることに恐怖心を抱いている住人たちも多くおり、程よく身を隠せるこの柳のフェンスはそういった人々からも愛されています。このように様々な人の立場に立って多角的にこの敷地を観察し、この街の進むべき方向を建築デザインを通して提案していただきます。
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