北欧研究所で創造した自分だけの軸

日本から遠く離れた国、デンマークでのインターン。交換留学を始めた2015年9月から終了の翌年7月まで本格的に北欧研究所での活動に携わらせて頂いた。世界で最も幸福度が高い国、社会保障が手厚い国、小さな国ということ以外に、デンマークについてあまり知らなかった。渡航前に調べた情報も、この国について深く知ることはできなかった。それ故、インターン活動開始当初は自分がいかに組織に貢献できるか分からなかった。

 

北欧研究所で求められることは、メンバー個人が興味・関心あるテーマを主体的に追究し続けることのできる探求心である。私が担当したテーマはデンマークの社会保障である。一方、コペンハーゲン大学の講義で「デンマークの社会福祉モデル」を受講した。当然、大学だけの学びだけでは見えにくい部分がある。例えば、受講した講義では、デンマークの社会福祉の良い点ばかりが説明され、デンマークが現状として抱えている問題について具体的に理解することが難しかった。しかしながら、インターンの活動で、デンマークの教育予算削減デモやシリア難民から一定額を超える資産没収の法案可決の背景についてデンマークの社会福祉と財政的観点から考察した。単に、大学の学びを学問という枠組みに封じ込めるのではなく、テーマを追究するプロセスで、社会福祉という学問をデンマークで起こっている問題と結びつけることができた。それが、知的探求心を育むことにつながった。

 

また、担当したテーマ以外に、インターン期間中に取り組みたいプロジェクトテーマを自由に設定し、インタビューや執筆活動を行った。私の場合、「デンマーク人の幸福観」という大きなテーマの中で、主に「ギャップイヤー」と「アート」の2つの分野から幸福観にアプローチを試みた。話し手からより良い話を引き出すためのインタビューの仕方や集めた情報を明確に読者に伝えるための文章の書き方を磨くことができた。何よりも、私にとって価値のあったことは、「自分だけの軸」を創造し、育んだことである。デンマークでは、頻繁に「あなたは、何をしている人ですか?」、「どうして、それをするのですか?」という2つの質問をされる。北欧研究所でのインターンを始めて以来、これら2つの質問を自問自答するプロセスにおいて、私は「自分だけの軸」を持つことの重要性に気づいた。その軸は、他者との無意味な比較から生まれるものではなく、自身の好きな物事に対する内発的な動機によって生まれるものである。例えば、私の場合、幸福に関してインタビューしたことや自分の新たなアイデアを執筆していた時、自分だけの軸を創造していると感じた。

 

「創造」という言葉は、美しく聞こえるかもしれない。しかしながら、そのプロセスで悩み、もがいた時期もあった。インターンを開始して最初の数か月は、自分が調査したいことや貢献できることを探し、何度も試行錯誤する日々であった。それに加え、インタビューの準備方法や議事録や文章の書き方等、実務的な能力の向上に挑戦した。あらゆる場面で、安岡代表を始めとした北欧研究所のメンバーからアドバイスやフィードバックをいただいた。それに加え、インタビューでは「自分の軸」の創造を鼓舞してくれるような素晴らしい人たちに出会うことができた。北欧研究所の活動を通して出会った人たちに感謝の気持ちを忘れず、帰国後の残り少ない大学生活を実りあるものにしたい。1年間、本当にありがとうございました。