民間企業による少子化対策
10月1日、旅行代理店スピースが、新たな旅行促進PRプログラムを立ち上げた。昨年に引き続き2度目の「Do it for Denmark」と名付けられた少子化対策という名の旅行促進PRプログラムが注目されている。
<出産率の低下傾向と少子化対策>
デンマークでは、近年、わずかながら出産率の低下が課題として言及されるようになっている。デンマーク統計局によると、直近の11年から13年の間にも徐々に低下していることがわかる。
現在、デンマークでは、国の施策として少子化対策は特に取られていない。あえて少子化対策関連施策を挙げるならば、出産支援や育児休暇がそれに当たる。例えば、母親は出産4週間前から出産後14週間は必須、出産後32周までは、有給(満額もしくは出産休暇前の70%ほど)での休暇となる。
デンマーク王立病院の調査によると、デンマークにおいては、国のサポート不足により、少子化が進展しているのではない。少子化は、初産年齢の高齢化によるものだというものだ。70年代では第一子出産年齢が24歳であった一方で、現在では29歳から35歳までと年齢が徐々に上がっている。
この社会現状をうまくPRへと向けたのがスピースである。スピースはデンマークに本社をおく旅行代理店であり、主にヨーロッパ、アメリカなどへの旅行ツアーを提供している。少子化問題が社会で取りざたされるようになった昨年、旅行促進を目的としたカップルへの特典ツアーのPRを開始した。その名も”Do it for Denmark”である。
14年3月26日には、このキャンペーンPRがソーシャルメディアサイトであるユーチューブで公開された。デンマーク国営放送のニュースによると、このビデオが公開されてから1週間のうちに400万回の再生が記録された。
コマーシャルは、多くのカップルは海外旅行中に妊娠することがストーリ仕立てで伝えられている。スピースは、スピース提供ツアーで妊娠した場合、スピースからオムツなど新生児への必需品を3年分プレゼントするとしており、だからこそ、(スピースを使って)もっと旅行に行こうという旅行促進キャンペーンを展開している。ストーリは、非常に大人向きの内容で、かつ拡散されやすい面白さも含まれている。
スピースのコマーシャルの貢献度を測ることは難しいが、デンマーク人のみに絞った出産率は、13-14年の間で、13年35,385名、14年45,545名と、わずかだが上昇している。
<スピースの旅行促進キャンペーン第二弾>
スピースは、前年度のコマーシャルが好評だったことを受け、今年も新しいコマーシャルを公開した。15年10月1日付けに公開された“Do it for Denmark – Do it for Mom (デンマークのためにやろう – お母さんのために)”。今回はカップルへの特典ではなく、孫が欲しい親が特典ツアーを自分の子供の代わりに購入することができるものだ。今回スピースはオンライン上で、親がキャンペーンに参加できるような形をとっており、当選した場合、旅行費用が1,000kr値下がるという特典付きだ。
今回コマーシャルが公開されてから、前回と同様、海外メディアのハフィントン・ポストやワシントンポスト、デイリー・メイルからも注目を浴びている。
Do it for Denmark (デンマークのために)コマーシャルCM動画:
Do it for Mom (デンマークのために –お母さんのために−)CM動画: